海保の無線 | 東京湾内羽田沖に漂流中と思われるプレジャーボートを発見との通報あり。 |
通信士 | はまなみ、了解。 |
海保隊員A | 漂流中と思われるプレジャーボートを確認。 船体の損傷を認めず。船名、GLORY−MARU。登録番号MJG 漂流船に移乗した。 |
海保隊員B | すいませーん。誰かいますか? |
海保隊員C | フライングデッキに人はいません。 |
海保隊員A | 船内は無人の模様。遺留物あり。 事件性は無さそうだが、海中転落の可能性あり。 やはり無人だ。曳航準備に入る。 うおっ |
女性 | えっ、何? |
男性 | ちょ、ちょ、ちょ、待て、待て! |
志村 | 集約センターから第一報連絡です。 アクアトンネル上り線で亀裂による浸水。詳細は不明ですが、車両数台が巻き込まれた模様です。 先程、官邸連絡室が設置されました。緊参チームに参集指示が出ています。 |
矢口 | 了解した。総理は? |
志村 | 到着予定まで、28分あります。 |
矢口 | 今は情報が欲しい。下に降りよう。 |
志村 | はい。 |
危機管理担当要員 (警察庁) | 第一報確認します。発生日時8時30分頃、発生場所東京湾アクアラインアクアトンネル上り線2.5キロポスト付近。発生状況としましてはトンネル天井部に亀裂が生じ浸水あり― |
危機管理担当要員 (警察庁) | 車両が数台巻き込まれた模様。 |
危機管理担当要員 (海上保安庁) | 湾内発生中の水蒸気煙にはまなみの海保隊員数名が巻き込まれた模様。 |
危機管理担当要員 (国土交通省) | アクアラインは上下線とも通行止め。湾内に三管本部から注意喚起が出ています。 |
矢口 | 郡山危機管理監、状況はどうなっていますか。 |
郡山 | 隧道事故案件は衝突事故発生を5件確認しています。 |
矢口 | 崩落の原因は、局地的な地震ですか? |
沖 | 現在、本庁に問い合わせ中です。 |
矢口 | 海上の噴火的事象との関連はどうですか? |
郡山 | 今は何とも。情報不足です。 |
危機管理担当要員 (内閣府) | 海保のヘリテレ、来ました! |
志村 | やはり、海底火山の噴火に見えますね。 |
矢口 | にしては違和感があるな… |
海保ヘリ通信員 | こちら、保安691水蒸気はなおも噴出中 |
海保ヘリ通信員 | 変色水が攪拌され海中の状況を確認できません。 |
郡山 | 状況が不可測だ。今後は複合的な初動対応が必要と思われる。官邸対策室に改組する。 |
オペセン | 官邸対策室への改組に伴い消防庁災害対策本部、設置しました。 |
危機管理担当要員 (国交省) | 三管 本部より連絡。湾内の航行船舶を入域制限。全域を無期限封鎖したとFAXで送信しました。 |
危機管理担当要員 (総務省) | 国交省より当該沿岸部に避難準備勧告を指示との連絡あり。 |
アナウンス | 避難勧告が出ています!直ちにここから退避してください。 |
警官 | 警察が誘導します!皆さん、急いで乗車して木更津方面へ避難してください! |
係員 | 浸水が続いています。 |
男性 | うわ車どうしたらいい… |
男性 | トンネル水浸しだ。 |
係員 | 頭打たないように気をつけてください。 |
男性 | すげぇ、滑り台。 |
男性 | うわぁ。 |
係員 | 騒がないで。 |
係員 | 1番避難口から救護所へ向かいます。 |
係員 | 歩ける方は徒歩による… |
男性 | すげえこんな風になってんだ。 |
女性 | もうヤダよ、足痛い。 |
係員 | 車両が通過します。 |
係員 | こちら上り線1番避難口です。 |
男性 | あのー、こっちにケガしてる人いるんで、ちょっと来てもらっていいすか。 |
男性 | すげぇなこれ!スクープ映像ってやつじゃね? |
男性 | うわっ。 |
女性 | えっ、何何何? |
女性 | 何なに?何の音? |
男性 | 上に何かいるんじゃないか? |
空港アナウンス | 出発の飛行機は一旦、ターミナルに戻ります。 |
男性 | ヤバイヤバイ。 |
女性 | えっ、なっ何か分かんないけど怖い。 |
女性 | あれっ……何あれ。 |
女性 | 何あれ、何あれ! |
男性 | 何かいる! |
志村 | 総理、戻られました! |
大門 | ですからアクアトンネル崩落事故の原因は現在も調査中でありまして… |
大河内 | ああ、細かいことはいい。要するに死者は出ていないんだな? |
大門 | ハイ。 |
大河内 | なら、対応は下に任していいじゃないか。 |
赤坂 | いえ、二次災害の危険があります。幹事長との面談はキャンセルとし、5分後にレクを始めさせていただきます。 |
大河内 | そうか、分かった。 |
東 | これは、海中に何らかの熱源が存在する事象です。 |
東 | 考えられるケースをあげて下さい。 |
関口 | 国籍不明の原潜事故、メルトダウン等は考えられませんか。 |
花森 | 有り得ません。東京湾の水深では潜水艦の潜水航行は不可能です。 |
柳原 | 海上の現象は、マグマ水蒸気爆発だと思われます。やはり新たな海底火山の噴火が妥当なとこでしょう。 |
沖 | あの、柳原大臣。そうは云いましても、震源地も浅く噴出物の成分はただの水蒸気と思われ、積極的に火山の噴火とは認められない事象でして―― |
柳原 | え、そうなのか?なら早く云え! |
沖 | 失礼しました。 |
関口 | 総理。新たな大規模熱水噴出孔も考えられます。 |
金井 | そうだ。それに違いない! |
矢口 | しかし、噴出位置がトンネルの直上です。既に地質調査済みの地点では考えにくい事象だと思われます。 |
金井 | 想定外だ。よくある事だろ。 |
矢口 | 総理。何物かが海底に居る可能性があります。 |
大河内 | 何物って、何だ? |
矢口 | 巨大な生物と推測します。ネットにはそれを裏付ける動画も存在します。 |
金井 | バカバカしい。あれがクジラの潮吹きとでも云いたいのか。 |
関口 | 海水が沸騰しているんだ。百度を超える体温の生物なぞいる訳無いだろう。 |
河野 | 本省もインターネット等の確認をしていますが、エビデンスとして確証に至るかどうか判断しかねます。 |
東 | 結論を急ぎましょう。ここは消去法で考えてはいかがですか。 |
柳原 | そうですな。やはり新たな海底火山か大規模熱水噴出孔でしょう。他に考えられません。 |
東 | では基本的対処方針をまとめて直ちに関係閣僚会議を開きます。よろしいですな総理。 |
大河内 | うむ、分かった。 |
東 | では、皆さん。大会議に集まってください。 |
赤坂 | 矢口。 総理レクは先に既定有りきの、結論路線だ。いい加減、かき回すのはやめとけ。 |
矢口 | しかし、あらゆる可能性を具申すべき事案と考えます。 |
赤坂 | やんちゃもいいが、お前を推した長官の立場も考えろ。いいな。忠告はしたぞ。 |
河野 | 隧道事故による重軽傷者数名の搬送は完了しております。東京湾海上に関しましては既に消防艇及び情報収集のヘリが出動しあらゆる事態に備えております。以上です。 |
柳原 | 次に東京湾沿岸等への対処ですが、噴火による噴石等の被害の危険性があるため警戒レベルを“避難準備”とし、羽田空港も万が一を考えて全便欠航として、危機管理を徹底しております。 失礼、訂正します。羽田空港の欠航による経済的損失よりも安全を優先する為の、やむを得ない処置として全便欠航とし―― |
柳原 | ――トンネル浸水事故の原因とされる新たな海底火山等ですが、現在までの所幸い有毒ガス等は検出されず、気象庁及び海保海洋情報部の調査研究チームを現地に送り、速やかな事故原因の撤退究明に努めさせて頂きます。 あ。ただ今噴火活動が急速に沈静化しているとの報告が入りました。 |
葉山 | もう収まったのか。 |
鵜飼 | 大した事無かったな。 |
矢口 | 総理。改めて提言いたします。やはり原因は巨大不明生物である可能性があります。各省庁の検討を願います。 |
東 | 矢口。閣僚会議の席だ。冗談はよせ。 |
大河内 | そうだ、議事録にも残るんだ。政府に恥をかかせる気か、そんなモノがいるわけないだろ! |
葉山 | ……見込まれております。えー未だ復旧のメドが立っておりません。そのため損失額はその後さらに増大するものと思われ―― |
東 | 中断!会議を一時中断します!テレビ!テレビ点けて! |
アナウンサー | 信じられません!全く信じられません!未だかつてこのような事があったでしょうか。前代未聞です。海面に突如現れた物体を捉えました。現在姿は海中に消え、目視することができませんが、先程巨大な尻尾のようなものが海面上に姿を現しました! |
関口 | なっ、何だ今のは? |
大河内 | 尻尾? |
東 | ええ、尻尾ですね。 |
赤坂 | 矢口の冗談が現実ならば、受け入れるしかないか。 |
東 | 事態急変のため、会議を中止します。関係閣僚は至急、総理執務室へ。 |
大河内 | これは一体、何だ? |
関口 | 巨大不明生物とし、か呼称しようがありませんが……目下、省内や大学や研究機関の生物学等、多方面から学識経験者を召集し、研究の有識者会議を設置すべく、候補者リストを作成しております。 |
大河内 | 早く正体を知りたい!急いでくれ! |
関口 | はい。 |
赤坂 | 総理。緊急の課題は、尻尾の正体よりも今後の対応です。 |
大河内 | あっそうか。 |
金井 | しかし、こいつは、思ったより想定外すぎるぞ。 |
郡山 | ですが、対処プランの選択肢はシンプルです。静観つまり野放し。もしくは捕獲か駆除かそれとも湾外に追い出すか、ですね。 |
国平 | でしたら、駆除でよろしいかと。 |
葉山 | 賛成ですね。 トンネル事故との関連はさておいても羽田は全便欠航、東京湾内は無期限全面封鎖されており、既に莫大な経済的損失が出ております。 |
河野 | 私も、駆除に同意します。 |
金井 | そうだ。一刻も早く駆除すべきだ。そうだろう、防衛省! |
松本 | えー。過去有害鳥獣駆除を目的とした出動は幾度かありますが、海自による東京湾内での火器の使用は前例もなく何とも…… |
柳原 | まあまあ。事を荒立てず、穏便に追い出せないのか。 |
菊川 | 総理。各学会と環境保護団体が、貴重な新生物として捕獲調査を提言しています。定地網を至急湾内に用意してほしいそうです。 |
金井 | いや、ここは駆除だ!魚雷とか使えばすぐ済むだろ。 |
花森 | お気持ちは分かりますが、ここは火器使用も含め本省に検討の時間を頂きたい。 |
関口 | 私からも、ぜひとも捕獲を視野に入れた検討を願います。 |
矢口 | 速やかに、巨大不明生物の情報を収集し駆除、捕獲、排除と各ケース別の対処方法についての検討を開始して下さい。 |
平岡 | それ、どこの役所に言ったんですか? |
壱岐 | 水蒸気煙が、多摩川方面に向けて移動を開始した模様です。 |
金井 | え、動くの? |
柳原 | そりゃ、生き物だからな。 |
海保ヘリ通信員 | 巨大不明生物は、羽田D滑走路誘路側面から、多摩川河口に進入しています! あっ! |
大門 | 首都高湾岸線、多摩トンネルに浸水事故発生!損害不明! |
河野 | なんてこった。 |
関口 | 捕獲は無理だな。 |
安西 | 総理。まだ三名ですが、生物学の有識者が到着しました。 |
志賀 | あのテレビの映像だけでは、太古の恐竜なのかクジラの亜種なのか、種目も何も判別はつきませんね。 |
柳 | 誰も見たことのない水生生物の新種。それ以上は現物を調査しないとなんにも云えません。 |
塙 | そもそもあの映像が本物かどうか。実証もなく憶測で判断しては、もはや生物学とは言えんでしょうが。 |
大門 | 有識者会議、あと5分で終わります。 |
志村 | こんな事してる場合かよ。 |
大河内 | 時間を無駄にした。御用学者じゃ何も分からん。 |
安西 | おっしゃる通りです。 |
大河内 | レベルは問わん。誰でもいい、すぐに話の分かる奴を呼んでくれ! |
安西 | かしこまりました。 |
矢口 | 志村。 |
志村 | はい。 |
矢口 | 誰かいないか。 |
志村 | 確か、環境省にいる大学の先輩に詳しい人がいます。まだ課長補佐ですが。 |
矢口 | 構わないから、すぐに呼んでくれ。 |
尾頭 | この動き。基本は蛇行ですが補助として歩行交じっていますね。エラらしき形状から水棲生物と仮定しても、肺魚のような足の存在が推測できます。 |
矢口 | もし足があるなら、上陸の可能性はありますか? |
尾頭 | ハイ。可能性は捨て切れません。 |
大河内 | 本当か?どうなんだ。 |
大門 | と云われましても、まだ所管官庁も正式決定しておりませんので。 |
関口 | 学者の意見では、例えヒレのような脚があっても水棲生物が |
尾頭 | お言葉ですが、既に自重を支えている状態と考えます。 |
大河内 | 本当か?どうなんだ。 |
菊川 | あっ、はあ……うちの課長補佐が失礼なこと言っておりますが、先ほどの有識者の結論も上陸行動は常識として考えられないと。 |
大河内 | ……そうか。 |
東 | 総理。隧道案件の被害もあります。一刻も早く国民を安心させる為の緊急の記者会見を開くべきかと。 |
赤坂 | 総理。会見の際は不確実な憶測ではなく、確実な情報だけを公表すべきかと。 |
大河内 | 分かった。防災服と原稿を用意してくれ。 |
大河内 | 巨大不明生物はアクアトンネル多摩トンネル等に甚大な被害をもたらし、現在東京都大田区の呑川を遡上しております。 その正体は現時点では不明ではありますが、上陸という事態は想定しづらく、水深が浅くなり川岸に打ち上げられたとしても自重で潰れ死に至ると思われますので、どうかご安心ください。 繰り返します。巨大不明生物の上陸はあり得ませんので、都民、国民の皆様、どうか御安心下さい。 |
壱岐 | 総理。会見中に失礼します。 |
大河内 | え、蒲田に? |
男性A | 撮ってないで早く! |
男性B | 早く逃げろ! |
男性A | 早く! |
記者 | なんで……さっき“上陸はあり得ない”って…… |
大河内 | どうするんだ!上陸はあり得ないと言っちゃった後だぞ! |
安西 | ですから、文言はアレンジせず、報道官の原稿のままお読みくださいと―― |
大河内 | ハッキリ云わんと国民は安心せん!心が伝わらんだろう! |
安西 | おっしゃる通りです。今、何故上陸できたのかを識者に問い合わせ中です。 |
大河内 | 済んだことはもういい!現状はどうなってる!? |
郡山 | 総理。これは緊急災害対策本部を設置する案件と考えます。 |
大河内 | 分かった。 |
東 | 設置に関する閣僚会議を終了します。で皆さん、これで。 |
都庁職員 | 官邸より当庁に対する、シャドウ・エバキュエーションを考えた避難処置の指示を受理しました! |
小塚 | 何故、すぐに避難指示が出せないんだ。 |
田原 | なにせ想定外の事態で、該当する初動マニュアルが見当たりません。 |
小塚 | 災害マニュアルは、いつも役に立たないじゃないか!すぐに避難計画を考えろ! |
田原 | しかし、このような事態の防災訓練も行なっておりませんし、 |
田原 | パニックの回避を考えるならば、避難区域の広域な指定も困難です。 |
川又 | ここは住民の自主避難に任せるしかありません。 |
恩地 | 現場には、交通統制によるコントロールを徹底させます。 |
大庭 | 練馬の第1師団は既に都の要請により、災派で出ています。 |
浜田 | 引き続き、現運用部隊は救護と避難誘導任務を優先させます。 どの道、普通科の装備では対処できないでしょう。 |
石倉 | 機甲科も特科も即応できない。やはり対戦ヘリしかないな。木更津の状況を確認しておけ。 |
部下 | はい。 |
小沢 | 三沢のF-2を爆装させて上げるか? |
浜田 | いえ。国民に被害が出た場合、自衛隊の存続に関わる可能性があります。使用武器は最小限に留めましょう。 |
北野 | ただし、彼の能力が不明すぎる。我の全力を投入する準備が必要だと考えます。 |
矢島 | そうだな。 三自衛隊の統合運用による作戦案を統幕長に進言しよう。官邸に連絡。 |
花森 | 東部方面総監を指揮官とした統合任務部隊を編成。作戦目的は駆除とします。 |
財前 | 陸上部隊は住民の避難誘導優先で対応できない為、即応可能な回転翼機を主力とした作戦を立案しました。 |
郡山 | 総理。市街地での作戦なので老人や病人等が残っている可能性があります。 |
大河内 | だとしたら、現場を見ない事には判断しかねるだろう。 |
赤坂 | 現状では、国民の生命及び私有財産への損害もやむを得ないと考えます。 |
東 | 総理。ここは苦しいところですが承認のご決断を。 |
大河内 | ……分かった。 |
貝塚 | 対応が想定外で、前例がない危険な任務だ。隊員は志願させるのか? |
芦田 | いえ、ローテでいきます。 皆、入隊した時から覚悟はできています。 |
芦田 | 気をつけ!敬礼! |
芦田 | 木更津離陸 |
柳原 | これで一安心だな。 ドでかくても生き物だ。自衛隊の武器で殺処分できるだろう。 |
金井 | ああ、奴の死骸を利用した復興財源案を考えてみるか。 |
矢口 | 大臣。先の戦争では旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあってほしいという発想などにしがみついたが為に、国民に300万人以上もの犠牲者が出ています。根拠のない楽観は禁物です。 |
消防隊員 | 足元に気を付けてください!落ち着いて下さい。 |
消防隊員 | 早くここから離れて!急いで下さい。 |
消防隊隊長 | 地震災害時の避難場所では役に立ちません!新たな避難場所の指示を請う、どうぞ! |
危機管理担当要員 (防衛省) | 巨大不明生物が停止。突如進行停止した模様です。 |
大河内 | 停止?何だ、急に。 |
矢口 | すごい。まるで、進化だ。 |
貝塚 | アタッカー1、こちらCP、送れ。 |
芦田 | CP、アタッカー1、送れ。 |
貝塚 | ホールディングエリア2に前進、別命あるまで待機、送れ。 |
芦田 | アタッカー1、了解。 |
射撃手 | 報告と形状が違います。 |
芦田 | CP、アタッカー1、目標が報告と違う。繰り返す、目標が報告と違う! |
貝塚 | アタッカー1、CP、駆除作戦は続行。そのまま待機!指示を待て。 |
郡山 | 作戦展開区域の、住民避難完了との報告です。 |
財前 | 分かりました。 花森大臣。いつでも射撃を開始できます。 |
花森 | 了解しました。総理、本当に始めますよ。いいですね。 |
大河内 | 分かっている。やってくれ。 |
貝塚 | アタッカー1、CP、巨大不明生物への射撃を開始せよ。射撃開始、繰り返す、射撃開始、送れ。 |
芦田 | CP、アタッカー1、了解、射撃する。 目標正面、巨大不明生物頭部、距離300、発射用意―― |
観測手 | 射撃待て!射撃待て! |
金井 | 何故、撃たないんだ? |
観測手 | 目標周辺に人影を確認!射線上に住民がいる! |
貝塚 | まだ人がいる!射撃の可否を問う! |
山岡 | まだ人がいる!射撃の可否を問う! |
矢島 | まだ人がいる!射撃の可否を問う! |
財前 | 人が残っています。射撃を開始して構いませんか。 |
花森 | 総理。撃ちますか?いいですか? 総理! |
大河内 | 中止だ!攻撃中止! 自衛隊の弾を国民に向けることは出来ない! |
貝塚 | アタッカー1、CP、攻撃中止、待機維持!送れ。 |
貝塚 | 了解。射撃中止!待機する! |
危機管理担当要員 (防衛省) | 巨大不明生物は、天王洲運河より離岸。首都高羽田線を破断し京浜運河から東京湾へ移動中! |
危機管理担当要員 (国交省) | よって羽田空港は全便が欠航中―― |
危機管理担当要員 (消防庁) | 品川消防署管内、南品川付近にて新たな火災発生―― |
危機管理担当要員 (国交省) | 都内各路線は京浜を除いて運転を再開―― |
アナウンサー | 各国首脳から哀悼の意と支援の表明が届いています。 |
危機管理担当要員 (内閣府) | 援助物資やスタッフの受け入れを東京都の防災課と至急調整してくれ。 |
アナウンサー | 東京証券取引所は通常通り取引を行い、特別な事は計画していないと発表しました。 |
JR職員 | 東海道新幹線は、新横浜駅で折り返し運転を行なっています。 |
アナウンサー | アメリカ、フランスを始めとする各国の学術的調査団が成田空港や関西空港に降り立ち、現地へ向かいました。 |
危機管理担当要員 (防衛省) | 現在、浦賀水道を探索中なるも、目標はいまだ発見に至らず。海自の横須賀地方隊が探索範囲を拡げ相模湾を中心に探索中。 |
アナウンサー | 昨日の巨大不明生物上陸による死者行方不明者は100人を超え、今後も更に増えると見込まれています。 |
アナウンサー | 大田区、品川区の火災はほぼ沈静化され、現在、金井防災担当大臣を団長とした政府視察団が派遣されており、直接被害状況の確認を行っております。 |
柳原 | ……上陸からたったの2時間強で、この有り様とは…… |
矢口 | いえ。2時間強あっても、初期対応が至らず……残念です。 |
金井 | 想定外の事案だ。仕方ないだろう。 |
赤坂 | 完璧ではないが最善は尽くしている。うぬぼれるな、矢口。 |
内閣府係員 | 時間ですので報道関係者の取材を始めます。大臣は、こちらへ。 |
金井 | 分かった。 |
航海長 | 両舷、前進強速。 |
操舵員 | 両舷、前進強速。 |
航海長 | 対潜、対水上警戒を厳となせ。 |
花森 | 巨大不明生物は離岸後、金谷沖の東京湾底に潜行したと推測されます。 |
財前 | 現在、監視態勢を強化し、千葉沖と相模湾の哨戒を海自が遂行していますが、相模トラフに潜伏中となると、早期発見は困難です。 |
大河内 | いつまた、どこに現れるか分からん、ということか。 再上陸への備えはどうなんだ? |
三木 | 発見直後、水際での対着防衛作戦では、時間的に即応が困難です。 |
山岡 | 上陸地点と進攻方向のケース分けで、1次及び2次展開を考慮した作戦を考えるしかないな。 |
鮫島 | はい。ケース別に特科、戦車大隊及びF-2が連動した運用計画を、速やかに立案させます。 |
新人記者 | にしても、防衛拠点が関東近郊に偏ってますね。 |
ベテラン記者 | 迎撃作戦は、首都防衛が最優先だ。ま、5階からのお達しらしい。 |
新人記者 | ここでも、地方は後回しですか。 |
ベテラン記者 | 東京の人口は1300万人強。GNPは約85兆円、日本の17パーセントの水準だ。関東地区に広げると200兆円、40%にあたる。国家の維持を考えた戦略的判断だ。仕方ないだろう。 |
新人記者 | 国を守るって大変ですね。 |
矢口 | 防衛計画は市ヶ谷に任せて、官邸内に新たな専従調査班を設置することになったんだ。 |
泉 | 巨災対だろ。君がその事務局長を拝命したと聞いている。出世してるな。いい事だ。 |
矢口 | そのチームの人選を泉に頼みたい。霞ヶ関には顔が広いだろ。 |
泉 | 了解した。首をナナメに振らない連中を集めて渡すよ。 |
矢口 | ああ。骨太を頼むよ。 |
立川 | 立川です。 |
竹尾 | 竹尾でーす。 |
職員 | せーの。 |
矢口 | 巨災対事務局長の矢口だ。本対策室の中ではどう動いても人事査定に影響はない。なので役職年次省庁間の縦割りを気にせず、ここでは自由に発言してほしい。 |
森 | という事だ。まあ便宜上私が仕切るがそもそも出世に無縁な霞ヶ関のはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児、そういった人間の集まりだ。気にせず好きにやってくれ |
森 | で推定された基本スペックは、これだ。各省で確認してくれ。 |
竹尾 | これだけですか? |
森 | それだけだ。その先を調べるのが我々の仕事だ。 他に何か基礎情報があれば共有しておきたい。 |
矢口 | ちなみに、昨日の有識者会議では、あまりにも常識から外れすぎていて何も分からないという結論だったそうだ。 |
間 | 確認された形状を簡単に整理してみた。第1形態、第2形態、そして第3形態だ。今後も変態を遂げると思われる |
志村 | まだ次があるのか。 |
安田 | あと、先日採取した体液のサンプルは、うちの理研で分析中です。 |
尾頭 | サンプルがあるならうちにも回してください。外郭施設に手伝わせます。 |
安田 | それが、残りのサンプルは全部米国が持ってっちゃいました |
袖原 | 現場の残液は、腐敗臭がひどいという名目で全て焼却処分されたそうだ。 |
小松原 | ああそれ。裏で米国の圧力があったらしいよ。 |
尾頭 | 分かりました。分析は理研に任せます。 |
森 | 他、行動生物学的にも何かないか? |
安田 | 行動パターンと云っても、奴はただ移動してるだけです。なので、思考も特定できません。 |
間 | 知能レベルは不明だが、我々とのコミュニケーションは無理だろうな。 |
立川 | 素朴な疑問なんだが、あれのエネルギー源は何なんだ? |
安田 | 確かに、身体の活動だけではなく、基礎代謝だけでもかなりのエネルギー量が必要です。消化器官による酸素変換では消費量や動作効率が説明できませんね。 |
尾頭 | あれだけのエネルギー……まさか核分裂? |
安田 | フッ、冗談ポイです尾頭さん。あり得ませんよ。 |
矢口 | 横須賀の米空母が緊急出港? |
郡山 | そうだ。先ほど横須賀市の放射線モニタリングポストに反応があるとの報告が入った。 |
矢口 | 分かりました。至急原子力規制庁に確認します。 |
根岸 | ハイ。上から止められてるので公表を差し控えていますが、都内各地の放射線モニター空間線量に軽微な上昇が認められます。 |
矢口 | どこから漏れていると考えられますか?原発ですか? |
根岸 | いえ。全国全ての原子力施設での放射性物質のリークは確認されておりません。 |
矢口 | じゃあ、発生源は何なんだ。 |
安田 | わあっ!わあっ!ああ……こんなんアリか! |
矢口 | えっ? |
尾頭 | このサーベイデータって、あの巨大不明生物の移動ルートと、完全に一致しています。 |
安田 | 見て下さい。ほら。 |
矢口 | 尾頭さんの言うことが正しかったということか。 |
安田 | ごめんなさい。 |
尾頭 | すでに一般市民の間でも、情報はかなり広がっていますね。 |
矢口 | 長官室へ行く。赤坂補佐官と森戸さんに連絡してくれ。 |
東 | 面倒だな、これは。 |
矢口 | だからこそ、長官か総理が直ちに会見を開くべきです。 |
森戸 | とはいえ、発生源は特定出来ず、先の生物との関係性も不明なままの公式発表は、いたずらに不安をあおることになります。 |
赤坂 | 行政が避難指示を出す線量値でもない。すぐに政府が動く法的根拠もありません。 |
矢口 | しかしいくら軽微とはいえ放射性物質の案件です。会見を急ぐべきです。 |
東 | そうだな。私がやろう。総理には話しておく。 5分でいい。この後総理レクを入れてくれ。 |
大河内 | Yes,President Ross, I understand. Thank you. 一方的な注文ばかりだな、彼の国は。 |
赤坂 | 米国大統領次席補佐官が密かに来日。非公式な会談を総理に望んでいる。 |
矢口 | 動きが性急過ぎますね。 |
赤坂 | ああ。次席補佐官は既に横田を出てここに向かっている。外務省北米局が大慌てだ。同行の大統領特使が、お前にアポを取ったとの情報も入っている。 |
矢口 | 僕に?何故です。 |
パタースン | 現政権のレポートを読んで、私が判断したの。過去も興味深い。使えそうな人物としてRANDOU YAGUCHIがベターな選択。不服でも? |
矢口 | いえ。そうでしたら赤坂首相補佐官が適任かと思いますが。 |
パタースン | ああ、彼が断ったから次点のあなたにしたの。何をしてもいいけど、私に汚点を残さない仕事をして。 この当該人物を捜してほしい。 |
矢口 | その理由は何ですか? |
パタースン | ここに上陸した生物の存在を数年前から予言していた人物。今はそれで十分でしょ。7日前にNARITAに降りた時点までは把握している。 |
矢口 | GOROU MAKI。日本人。元大学教授。 |
パタースン | この国の捜査機関は優秀だそうね。期待してる。 |
矢口 | その対価は何ですか? |
パタースン | 彼の情報とトレードして我々の蓄積情報をあなたに渡す。ただし、第3国にインテリジェンスは流さない。日米仲良く ウィンウィン。(Just. US-Japan, so Win-Win.) |
矢口 | わかりました、引き受けましょう。 (Understood. Let's get do it.) |
パタースン | ありがとう。友人のパーティーから横田基地まで直行だったので着替えを用意する時間もなかった。 (Thank you. I rushed to yokota straight front a party. so I didn't have time to change.) ZARAはどこ? |
東 | Kayoko Anne Patterson……。随分若いな。 |
赤坂 | 年齢より才能を見るのがあの国の良い所です。おまけにパタースン上院議員の長女です。 |
東 | カーン合意、黒幕の娘か。手強そうだ。 親からの才能と七光りでのし上がる。君には苦手なタイプだな。 |
赤坂 | いえ。親のコネも臆することなく利用する。矢口と同じ政治家タイプです。 |
本部 | こんな時に人捜しですか。 |
沢口 | 矢口副長官からだ。彼の先代には世話になった。最優先で頼む。鑑取りにどれだけ人員を割いても構わん。 |
沢口 | 人的情報はこれだけだ。 |
本部 | 日本から追い出されるように米国の研究機関に移籍した異端の老教授。生物学者生物学者なのにエネルギー関連の研究機関に帰属。面白い老人ですね。 レッドノーティスですか? |
沢口 | いや、生活拠点の特定までだ。後はNSAだかCIAだかが引き継ぐらしい。こちらに迷惑はかけないそうだ。 |
矢口 | 元教授の最後の足取りです。 |
パタースン | さっすが、おばあちゃんの国。仕事が速い。 |
矢口 | 先日来行方不明。羽田沖で漂流していた彼の小型船が無人状態で海保に保護されています。 パタースン特使。あなたが捜していたのは元教授ではなく、こちらでは? |
パタースン | ええ そっちもね (Yeah, that too.) |
矢口 | “私は好きにした、君らも好きにしろ”遺書と見るべきか。 中身の確認が必要ですか? |
パタースン | 必要ない。 (No need.) 信頼してる。 (I trust you.) 印刷は特殊インク。コピーは不可能よ。 |
矢口 | 写真は撮れます。対策チームには共有させます。 Godzilla? |
パタースン | そう。米国エネルギー省のコードネーム“GODZILLA” (That's right. It's the DOEs code name 『GODZILLA』) 彼が英語で名付けていた。 |
矢口 | |
志村 | ひとつだけヒットしました。元教授の故郷の大戸島で、神の化身を意味する言葉だそうです。 |
パタースン | 荒ぶる神。彼が英語表記にGODを付けたと聞いている。 |
矢口 | 云いにくいな。日本名は本来のゴジラにしよう。 |
東 | ゴジラ、ですか? |
赤坂 | こんな時に、名前なんかどうでもいいでしょう。 |
大河内 | まあ、米国に由来があるならそれもいいじゃないか。名前は付いていることが大切だ。 |
アナウンサー | 先ほど、政府首脳が非公式に巨大不明生物をゴジラ、ゴジラと呼称するとの談話を発表しました。 |
早船 | 牧悟郎。元城南大学統合生物学部教授ね。 |
志村 | どういう人物か調べてほしい。“記事にしていい時がきたら早船さんに独占させるのでよろしく”と、うちの先生が云ってました。 |
早船 | はい。分かってますよ。 |
矢口 | 今から60年前、各国に放射性廃棄物の無秩序な海洋投棄の資料ですか。 まさか、ゴジラが食べた? |
パタースン | Yes.それがDOEの出した結論。 |
パタースン | 放射性廃棄物を餌とする生物の存在に気付いたDOEが、調査分析を嘱託機関に依頼。その中心人物がMAKI元教授だった。太古から生き延びた海洋生物が奇跡的に生き長らえていた生息地域に、偶然、大量の放射性廃棄物が海中投入され、その影響下で生き残るため、放射性に耐性を持つ生物へ急速に変化した。それがGodzillaに関する彼の仮説。 |
尾頭 | しかし、パタースン特使。上陸したゴジラは当時の推定身長をはるかに上回っています。 |
パタースン | Yes.それに水生生物から陸上生物への急激な突然変異。今のGodzillaはDOEの情報を超えた状態で、私にも説明がつかない。私の権限で知りうる情報は、ここまで。ここからは、Personal service! |
森 | おい。 |
矢口 | 牧元教授の遺品ですか? |
パタースン | Uh-huh. |
矢口 | さっぱり分かりませんね。 |
間 | 新元素による分子配列でもない。一体ゴジラの何なんだ? |
パタースン | 私も専門外でよく理解できないけど、構造レイヤーの解析表らしいの。彼が本国に残していた最終データには意図的な空白があり、解析不能だった。やはりこれと合わせると完全版になるみたい。 |
矢口 | 我々も解析を試みます。よろしいですね。 |
パタースン | Sure. どうも日本語の敬語が苦手なの。そろそろ、タメ口にしてくれる? |
矢口 | では、遠慮なく。米国はゴジラをどうする気だ、研究対象かそれとも駆逐対象か? |
矢口 | それは大統領が決める。あなたの国は誰が決めるの? |
内閣府官僚 | ようやく被害者救済と復興の特別法案が閣議決定か。 |
内閣府官僚 | ゴジラ関連法案も、なかなか省庁間のサブ調整が難しい。 |
内閣府官僚 | 前例のない案件なので組織令も曖昧だ。面倒を嫌った消極的権限争いも無理ないよ。 |
総務省官僚 | 機密保護案件だけは、紙爆弾もなく早かったな。 |
総務省官僚 | 外務省のゴリ押しだ。いつもの圧力があったらしい。 |
総務省官僚 | 情報は独占してることに価値がある。米国もゴジラ情報をこの先、外交的手段に使いたいからな。 |
総務省官僚 | ホワイトハウスとやりあうなら、駆け引きの上手い、赤坂補佐官に期待するしかないよ。 |
根岸 | 現場で回収された放射性物質の分析結果です。検出されたγ線の波長が既存のそれと一致しません。大発見ですよ。ゴジラでしたっけ?その体内には未知の新元素が存在しています。 |
赤坂 | DOEも絡んだ米国の素早い動きは、これが事由か。データを対策室に。総理に連絡だ。 |
秘書官 | はい。 |
大河内 | 分かった。放射能とはまた面倒な話だ。で、どこまで云っていいんだ? ゴジラの通過経路で回収された物質を分析した結果、被災地付近で0.5μSvという…… |
森 | ごちそうさまでした。 |
安田 | ごちそうさまでした。 |
森 | しかし米国の情報供与等があったもののここに来てあれだな。色々と手詰まりになってきた感があるな。 |
安田 | ですね。理研の報告はインパクトありましたからね。まさかゴジラに人類の8倍もの遺伝子情報があるとは。 |
根岸 | シークエンスの作業だけで何年かかるか分からない情報量ですよ。 |
尾頭 | これでゴジラがこの星で最も進化した生物だという事実が確定しました。 |
間 | ゴジラは世代交代ではなく1個体のまま劇的な進化を続けている。まさに人知を超えた完全生物だ。 |
袖原 | とはいえゴジラは生き物だ。ならば必ず倒せる。 |
間 | だと、いいんだが。 |
森 | それを探るのも、我々巨災対の仕事ですよ。体内情報だけでなく行動にも何かヒントはないか? |
安田 | とはいえ歩くだけですよ。 |
立川 | そういえば、先の上陸時、なぜ急に東京湾に戻ったんだ? |
間 | そうか。冷えてないんだ。 |
間 | ゴジラは恐らく体内に原子炉のようなシステムを有していて、背びれ等から常時放熱をしている。だがそれは余熱調整の補助で、メーンは血液流を冷却機能としてる可能性が非常に高い! |
安田 | だから、最初の形状変態時は体温調整がまだうまく働かず、一時的に退化し海中に戻ったと推測できます。 |
根岸 | そこから考えられる唯一の対処方法が、体内冷却システムの強制停止です。 |
尾頭 | 停止されるとゴジラは生命維持のため、自ら反応炉をスクラム状態にせざるを得ないと思われます。その過程で急速な冷却を必要とするので、死に至るかは不明ですが少なくとも活動の凍結は可能です。 |
町田 | その為の血液凝固促進剤の経口投与の可能性を模索すべきと考えます。 |
矢口 | ゴジラは直立歩行形態になっている。できるのか? |
袖原 | 具体的な実行方法は、朝霞で立案します。経口投与には民間の高圧ポンプ車が使えそうです。 |
竹尾 | 必要な凝固剤や特殊車両等は、厚労省、経産省、うちの役所で各自手配して、全国からかき集めます。 |
森 | これを矢口プランとして、総理への提案をお願いします。 |
矢口 | わかった。名前はともかく、進めてくれ。 |
一同 | ハイ。 |
デモ隊 | ゴジラを倒せ! |
デモ隊 | ゴジラは神だ! |
デモ隊 | ゴジラを倒せ! |
デモ隊 | ゴジラを守れ! |
広田 | ごくろうさまです。 |
矢口 | ああ。いつもありがとう。 |
志村 | ありがとうございます。 |
矢口 | みんな。少し休むか。 |
一同 | はい。 |
志村 | 頼んでもないのに黙々とやれることをやって、“家庭があるだろうから帰ってもいいですよ”と言っても帰らず、あるいは帰ってもまた早朝に手料理を持って出勤してくれたりしています。マジ、感動ですよ。 |
津秋 | ゴジラ関連法案の整備も、泉政調副会長の調整もあって、各省が所管にとらわれずよくやってくれています。 |
檜山 | 担当部署以外のメンバーもたくさんの志願者が参加して、不眠不休で頑張っています。 |
矢口 | そうだな。この国はまだまだやれる。そう感じるよ。 |
志村 | しかし、副長官。そのシャツはいつから着ているんですか。 |
矢口 | うん? |
尾頭 | 正直、服も部屋も少しにおいます。 |
矢口 | そうか? |
矢口 | シャワーぐらい浴びても、よろしいかと思われます。 |
志村 | 副長官!1分前にゴジラが相模湾から出現。 鎌倉に再上陸します! |
危機管理要員 (消防庁) | J-ALERTを発動。巨大不明生物上陸警報を一斉に伝達! |
危機管理要員 (内閣官房) | Em-Netによる第一次情報の通知及び送信を完了しました! |
防災行政無線 | こちらは、防災かまくらです。ただいま政府により巨大不明生物出現による緊急避難警報が発令されました。市民のみなさんは警察、消防の指示に従い…… |
大門 | 総理、入ります。 |
防衛省 リエゾン | 目標は鎌倉市街を抜け、釜利谷方面へと侵攻する模様。 |
柳原 | おい。初上陸よりかなりデカくなってないか? |
金井 | ああ。まったく想定外の大きさだ |
葉山 | 顔や姿もまるで違うぞ。 |
矢口 | ええ。身長が2倍近くになっています。 さらに進化したゴジラ第4形態です。 |
関口 | こいつは、大事になりそうだ。 |
消防隊員 | 該当地区以外の住民は屋内待機です。許可のない外出は法律で禁じられています。 |
アナウンス | 当地区は避難該当区域に指定されました…… |
防衛省 リエゾン | 巨大不明生物、3時間以内に再び都内侵入の可能性大! |
佃 | なんでまたこっちに来るんだっ。 |
葉山 | 配布資料にある通り、攻撃に際し体内の放射性物質の拡散等のリスクが存在しますが、再び首都蹂躙を許すわけにいかず、ここは侵攻阻止を優先すべきと考えます。 |
河野 | ゴジラは放射性物質が補給源と聞く。もしも原子力関連施設を襲われたら、ゴジラより大変なことになる。 総理。今のうちに叩くべきです。 |
国平 | 総理。海外から弱腰と見られる事態も避けたいと考えます。 |
大河内 | 例の矢口プランの進捗はどうなってる? |
矢口 | 残念ながら実行に至るまではまだ―― |
花森 | 総理。命令があれば自衛隊は市街地でも徹底的にやります。 |
東 | 災害緊急事態の布告は、今も継続中です。攻撃は、総理の御意志で決まります。 |
赤坂 | 総理。 |
大河内 | 分かっている。始めてくれ。 |
花森 | 分かりました、総理。市ヶ谷に連絡を。 |
財前 | はい。 |
矢島 | 総理から新たな作戦の実施が下命された。武器使用は無制限までを想定。防衛大臣からは“いざとなったら徹底的にやれ、必ず都内侵入前に駆除せよ”との事だ。 |
高須 | 神奈川上陸の場合は、B号計画となります。 |
山岡 | よし、川崎側を主戦場とする駆除作戦、B-2号を発動せよ。 |
三木 | 了解。多摩川を絶対防衛ラインと想定するB-2号、“タバ作戦”を開始。 |
パイロットA | Taxi to holding point B1, |
パイロットB |
戸川 ヘリ隊長 | Attacker formation will report 5 mile west. |
アパッチ第3小隊長 | P |
通信員A | 戦車及び特科大隊、丸子橋方面へ配備中。 |
通信員B | 了解。射撃準備態勢に移れ。 |
花森 | 頼んだわよ。 |
通信員C | 会敵予想時刻まで、後8分。 |
通信員D | 警視庁より連絡。第1指定区域内は避難完了との連絡有り。 |
1等陸士 | ホントにここで実戦なんですね。 |
陸士長 | 緊張すんな。訓練通りやりゃあいい。 |
西郷 | 目標は体内に放射性物質を有している。よって攻撃は頭部と脚部の― |
西郷 | ピンポイントのみとする。改めて全部隊に徹底させろ。 |
通信員E | 戦車大隊、射撃陣地に進入完了。 |
通信員F | 特科大隊、射撃準備完了。 |
通信員G | 御殿場の多連装、準備完了。 |
通信員C | 目標接近。会敵予想時刻まであと3分。 |
通信員D | 第1から第4対戦ヘリ小隊、間もなく現着。 |
西郷 | C |
戸川 ヘリ隊長 | CP、C01、送れ。 |
西郷 | C01、CP、P01は武蔵小杉駅上空、BP1にて待機。P |
戸川 ヘリ隊長 | CP、C01、BP1進入。目標との距離、約1200、送れ。 |
西郷 | 了解。待機維持せよ、送れ。 |
防衛省 リエゾン | 対戦ヘリ小隊による威力偵察、準備完了。 |
郡山 | 全該当地区の避難完了を確認しました。 |
大河内 | 郡山君。今度は本当だな。間違いないな。 |
郡山 | 私は現場の報告を、信じるだけです。 |
財前 | 目標、依然進行中です。 |
花森 | 総理。武器使用の承認をお願いします。 |
大河内 | 武器の使用を許可する。 |
鮫島 | 総理の下命を確認しました! |
山岡 | 射撃を許可する。射撃開始! |
西郷 | タバ作戦、フェイズ1を開始する。射撃開始、繰り返す、射撃開始、送れ。 |
戸川 ヘリ隊長 | CP、C01、了解。射撃する。 |
戸川 ヘリ隊長 | 発射用意、発射! |
通信員 | 機関砲、全弾命中!しかし効果を認めず! |
西郷 | アパッチの30ミリに切り替えろ。もう少し様子を見る。 |
通信員D | ニンジャACP、威力偵察第3波展開中。効果を報告せよ。 |
観測員 | 第3小隊、攻撃続行中。目標健在。未だ効果なし。 |
三木 | 16000発もの機関砲を食らい続けて、傷ひとつ付かんとは―― |
山岡 | 市ヶ谷と官邸に連絡。 |
財前 | 東部方面総監が、誘導弾の使用許可を求めています。 |
花森 | 人口密集地ですがやむを得ません。総理。ミサイルの使用を許可しましょう。 |
大河内 | 今より武器の無制限使用を許可します。 |
西郷 | C01、CP、攻撃を誘導弾に切り替える。発射準備完了次第、全弾射撃!送れ! |
戸川 ヘリ隊長 | 了解!P01から04、誘導弾全弾発射!目標、正面巨大不明生物、距離700、発射用意、発射! TOW、ヘルファイア、全弾発射! |
花森 | 誘導弾、全弾命中。しかし目視による損傷、確認できません。 |
金井 | ミサイルでも死なないのか? |
菊川 | なんて奴だ。 |
三木 | 目標の外皮硬度は、予想以上です。 |
山岡 | 作戦をフェイズ2に移行する。 |
防衛部員A | 目標は、目下直進中。速度方位共に変化なし。 |
西郷 | タイガー1、CP、タバ作戦フェイズ2を開始。射撃開始、繰り返す、射撃開始、送れ。 |
岡野 大隊長 | 了解。タイガー、こちらタイガー1、射撃開始、射撃開始! |
池田 中隊長 |
池田 | 10、各車、射撃開始! 距離よし!撃て! 命中、続いて撃て! |
観測員 | 目標、移動速度が低下した模様! |
西郷 | よし、このまま押すぞ。特科大隊、攻撃開始! |
FDC通信員 | 弾着10秒、8、7、6、5、4、3…弾着、今! |
観測班長 | 全弾命中! |
砲班中隊長 | 斉射用意。撃て! |
観測員 | 目標、堤防敷を越え多摩川河川区域に侵入。 |
西郷 | 御殿場と特科に伝達。攻撃開始! |
防衛部員 | 目標、進行を停止! |
山岡 | 作戦をフェイズ3に移行。直ちに航空攻撃を開始。 |
池田 中隊長 | 10各車、こちら10、フェイズ3に移行!全車陣地変換!繰り返す、全車陣地変換! |
FAC | Cleared attack. |
パイロット | Cleared attack. Fire. Ready...now. Bombs away. Laser on. |
FAC | Lasing. |
空自観測員 | Completed! |
観測員 | 目標、進路を北西に転進。繰り返す、北西に転進。 |
関口 | 向きを変えた? |
河野 | 空爆が効いたのか? |
花森 | JDAMの第2波、行きます。 |
国平 | よし。これでトドメだ。 |
一同 | おおっ! |
金井 | やったか! |
村崎 | 全車退避!全速後退! |
西郷 | 退避!退避! |
一同 | 退避!退避! |
観測員 | 目標!多摩川を越え、東京都に侵入! |
戸川 ヘリ隊長 | ACP、C01、全機、全火器、残弾ナシ!繰り返す、全火器、残弾ナシ! |
第4中隊長 | タイガー1、こちら |
岡野 大隊長 | CP、こちらタイガー1、現在、8個小隊残弾なし。尚、現在までの被害状況としては、大破3、中破2、送れ! |
無線 | 前方指揮所壊滅。タバ戦闘団、指揮機能喪失。 |
観測員 | 目標、防衛ライン突破。防御陣地崩壊。作戦続行不能。 |
山本 | 統幕副長。特科大隊はまだ射程内です。攻撃を続行しましょう。 |
矢島 | ダメだ。まだ大田区と世田谷区から避難完了の報告を受けていない。 |
花森 | ああっ!総理。残念ですがここまでです。 |
大河内 | 分かった。作戦を終了する。 |
陸自隊員 | 足止めもかなわず……残念です。 |
西郷 | 気落ちは不要。国民を守るのが我々の仕事だ。攻撃だけが華じゃない。住民の避難を急がせろ。 |
無線 | CP、朝霞01、被害状況の詳細報告を請う。 |
通信員 | CP、タイガー、負傷人員収容のため増員を要請する。現在、重傷者数12名、中等傷25名。 |
袖原 | タバ作戦が失敗した。ゴジラは健在、依然進行中だ。 |
森 | 自衛隊の総力戦も、徒労と化すとは。 |
間 | 予測計算を凌駕する自己防御力だ。 |
尾頭 | 外からの物理兵器で倒せるなら、私たちも苦労しなくて済みます。 |
矢口 | ……まさに人知を超えた完全生物か。 |
防衛省 リエゾン | 目標、世田谷区から目黒区に侵入。 |
花森 | 総理。遺憾ながら、在日米軍に安保適用による駆除協力の要請を出しましょう。 |
国平 | 総理。駐日米大使からです。既に大使館防衛の為、空軍機がグアムを離陸しているそうです。 |
赤坂 | 至急、米国に正式な協力要請を出すように。私も横田で大使と確認する。 |
東 | 私は、在日米軍に関する緊急会見を開きます。 政府は在日米軍に対し日米安保条約に基づく駆除協力を正式に―― |
自衛隊 リエゾン | 米軍の爆撃予定範囲です。 |
恩地 | ……こんなに広いのか。 |
川又 | 無茶苦茶だ。ゴジラより大変じゃないか! |
小塚 | 搬送や移動じゃ間に合わん。とにかく地下施設に避難させるしかない! |
警官 | ゴジラに対し米軍の攻撃が開始されます。 |
消防隊員 | ここは危険です!地下に!地下鉄や地下街に避難してください! |
男性 | 押すなよ。 |
一同 | うわぁ! |
郡山 | ゴジラの予想進路内に官邸も位置しています。自衛隊で阻止できなかった奴です。米軍も駆除できない可能性があります。 |
大河内 | まさか、ここを捨てろというのか。 |
郡山 | ハイ。市ヶ谷も有明も危険です。直ちにここを退去し、官邸機能を立川予備施設に移管する必要があります。 |
大河内 | しかし米軍の攻撃が都内で始まる。私にはここでその推移を見極める義務がある。それに都民を置いて我々だけ逃げ出すことはできん。 |
矢口 | しかし総理。総理には東京を捨ててでも守らなければならない国民と国そのものがあります。ここは退避してください。 |
東 | 幸い、都庁は機能しています。しばしの間、指揮は小塚都知事に任せましょう。 |
大河内 | ……分かった。 |
壱岐 | 至急、木更津からヘリを2機用意します。 |
矢口 | 長官、我々は車で移動します。 |
東 | 分かった。もう出ろ。君たちの方が時間がかかる。渋滞で大変だろうが、後で会おう。 |
矢口 | はい。這ってでも行きます。 |
アナウンス | 巨大生物の接近に伴い、退避命令が発令されました。直ちに総員退避してください。 巨大生物の接近に伴い、退避命令が発令されました。直ちに総員退避してください。 |
志村 | ここもグリッドロック状態ですね。車はもう動きません。 |
矢口 | そうだな。米軍の攻撃が近い。みんなを地下に避難させよう。 あれが、ゴジラか。 |
志村 | 副長官。予定より早く米軍の攻撃が始まります。 |
壱岐 | 地中貫通型爆弾MOP?が命中。目標、損傷!出血を確認! |
金井 | いけるぞ! |
国平 | さすが、米軍だ。 |
郡山 | 総理。間もなくヘリが到着します。 |
志村 | 地下の方へ避難してください、地下の方へ。 |
矢口 | 何の光だ? |
壱岐 | 現在ゴジラの背部放熱器官が発光中、詳細不明! |
大河内 | 何をする気だ。 |
志村 | もう誰もいません。副長官も早く中へ! |
大使館職員 | 横田基地から緊急連絡。B-2、1号機が撃墜されたそうです。 (There’s an emergency call from Yokota Airbase. B-2, Number 1 seems to have been downed!) |
ランシング | バカな!信じられん。 (There's no way. That's impossible.) |
パタースン | Godzilla. まさに神の化身ね。 |
地上無線 | “目標は正面から謎の対空火器を放出中。2、3番機は背後から回り込め。1番機の仇を頼む” (“The target is shooting some unidentified weapon from the front. Bomber2 will circle in from behind. Payback time.”) |
機内無線 | “了解、今から仇を討つ。” (Roger. Payback.) |
ヘリ無線 | 官邸離陸 |
アナウンサー | 高い放射線量が予想されます、都民の皆さんは発生時から49時間は屋内待機するようにして下さい! |
自衛官 | ゴジラはどれほどの放射性物質を東京に放出したんだ。 |
小塚 | 霞ヶ関は壊滅らしい。政府は当てにするな!ここで決めて実行しろ! |
原子力規制庁担当者 | 巨大不明生物が放出した放射線流による被曝量、推定20Svです。 |
機動部隊隊員 | そっちにホットスポットが確認されている、バリケードテープの右に入らないように。 |
品川区長 | 空間線量が高いって聞いたぞ!備蓄の安定ヨウ素剤を配るのか、すぐに使うのか! |
アナウンサー | 放射線物質対応可能な第3及び第9方面本部消防救助機動部隊が、都内の除染と救助に出動しました。 |
都庁担当者 | サーベイ対象者が多すぎる。隔離の基準値を下げないと、現場がもたない。 |
消防庁職員 | 二次災害が起こる恐れがある。防護服のない救援隊は、災害現場に入らないように。 |
内閣府官僚 | 大河内総理以下、東官房長官ら総理臨時代理の就任予定者5名全員が安否不明の状況です。 |
都庁職員 | 警視庁、国交省、総務省辺りはギリギリで直撃を免れたようだ。消防庁が生存者の確認を急いでいる。 |
総務省職員 | 電話回線の復旧を急いでくれ。こっちの専用回線、公衆回線、自営回線を組み合わせて頼む。 |
内閣府職員 | これは将来的にはさいたま新都心、札幌、福岡、大阪、地方中核都市への遷都も考える必要がありますね。 |
経済評論家 | 被災地のあらゆるインフラの復旧の見通しがまるで立っていません。流通や経済的にも大打撃です。 |
アナウンサーA | 横須賀を出港したままの在日米軍空母はそのままシンガポールへと寄港し…… |
外務者官僚 | アメリカを含めかなりの数の駐日大使館と連絡が取れない状態です。 |
アナウンサーB | 都内からは数百万人規模と見られる膨大な避難民が受け入れ先や搬送手段も決まらないまま路地に溢れ不安な夜を過ごしています。 |
外務者職員 | 日本在住の外国人が本国からの勧告で日本を離れ、成田空港からチャーター機等で帰国しています。 |
アナウンサーC | 政治的空白を避ける為に、連絡が取れた閣僚数名により、現在、総理臨時代理の人選を与党幹部と共に協議中です。 |
アナウンサーD | なお官邸機能は、非常事態を想定し臨時拠点として整備されていた立川区域防災基地内の立川災害対策本部予備施設に移管されました。 |
アナウンス | 立川合同庁舎にお越しの方々にお知らせします。当施設では、所属の観光省庁にて発行された身分証をお持ちでない方の入館は固く禁じられています。 |
久松 | 矢口副長官! |
泉 | またかける。 |
志村 | 泉先生! |
泉 | いやぁ、とにかく無事でよかった。俺は金帰火来のおかげで助かったよ。矢口も地元は大事にしとけよ。おい、ケガしてるじゃないか。大丈夫か? |
志村 | すみません。何処も救急用品は品切れで―― |
矢口 | 大丈夫だ。大したケガじゃない。 |
予備要員A | 消防関係者は都庁の指示に従ってください。総務省はほとんど機能していません。ええ、音信不通です。 |
予備要員B | 帰宅難民は警察に任せていけばいい。一晩放っておいても死ぬ事はないから! |
予備要員C | 被害人口は約300万人だ、この先の風評被害は想像もつかない。報道への対応を急いでくれ。 |
矢口 | とにかく、情報をくれ、あるだけでいい。今ゴジラはどうなってる? |
泉 | 今も、活動を停止したまま。停止理由は目下のところまるで不明だ。 |
矢口 | 放射線量の状況は? |
泉 | 原子力規制庁は何とか被害を免れた。今、都内のサーベイでてんてこ舞いだ。ゴジラのほうは、口から微量の放射性物質を今も放出しているが、この程度なら問題ないらしい。 |
久松 | ゴジラのよるプルームは房総沖に抜けたそうですが、かなりの広範囲に高濃度な汚染が広がっているそうです。 |
矢口 | 直撃を受けた都内3区は帰還困難区域となる恐れがある。除染の問題も大きくなるだろう。 |
泉 | 事態は危急存亡っちゅうか超深刻だが、対応するには人も物資も法律もまるで足りない状態だ。 |
志村 | 仕方ないですよ。総理も、官房長官も、花森大臣も皆……もう誰もいないですから。 |
矢口 | いない者を当てにするな!今は残った者でやれることをやるだけだろ! |
泉 | 矢口。まずは君が落ち着け。 ほい。 |
矢口 | すまない。 総理臨時代理は決まったのか? |
ラジオ | 与党内での調整が決着し、里見祐介農水大臣が総理臨時代理に指名されました。政府の機能不全による緊急避難としての臨時体制です。 |
ラジオ | これ以上の政治的空白を避ける為、直ちに新内閣が組閣される模様です。 |
志村 | しかし、派閥の年功序列と首班指名の功労賞で大臣になれた人が、臨時とはいえ、総理ですよ。 |
泉 | 生き残った現職大臣や幹事長から押し付けられたらしい。こんな時だ。誰も中継ぎで責任なんて負いたくないんだろう。 |
風越 | 佐世保からです。対馬沖付近に不穏な動きがあるそうです。 |
里見 | そう。ここはちと様子見かな。 外務省は動けるの? |
片山 | 機能復旧を急がせておりますが、まだ。 |
里見 | そう。とにかく、不測の事態だけは避けてよ。 |
片山 | ハイ。現地と大使にそう伝えます。 |
里見 | あ〜あ。伸びちゃったよ。 やっぱ総理の仕事って大変だなぁ。 |
泉 | まあ、腹の内の読めないお人だからな。 |
矢口 | 誰が総理だろうと、国を支えるのが我々の仕事だ。特別立法の草案を急ごう。 |
泉 | しかし、立川もゴジラから30キロしか離れていないが、大丈夫か? |
矢口 | ここがやられた時の政治的空白の心配なら無用だ。次のリーダーがすぐに決まるのが、この国の長所だということがよく分かった。 |
泉 | 次は君か? |
矢口 | まさか。 俺は10年後を考えている。 |
泉 | その時にまだ日本が残っていたら、総裁選に立候補してくれ応援するよ。見返りは幹事長のポストでいい。フフッ。 赤坂先生、先行して横田にいたんで無事だったんだってな。やっぱ、政治家に必要なのは策略と強運だ。ちゃっかり内閣官房長官代理に就任してる。君にも世渡りの素養があればな。 副本部長で特命担当大臣とはまた異例の出世だな。これで君が事実上の行政執行者だ。 |
矢口 | 聞こえはいいが、失敗した時の腹切り要員だ。赤坂さんの抜け目のない采配だよ。泉も首相補佐官に内定している。君の好きな出世コースじゃないか。 |
泉 | 出世は |
矢口 | 政界には敵か味方しかいない。シンプルだ。性に合ってる。 |
津秋 | 副本部長。巨災対のメンバーが到着しました。 |
矢口 | 先の悲劇から生き残り、チームの半数以上の者たちがここにいる事を、感謝する。残念ながらここに来ることができなかった者たちの想いと共に、諸君には頑張ってほしい。欠員は随時、補填していく。家族や友人、同僚を失った悲しみが消えることはない。だがそれを乗り越えることはできる。今は国民の為、対策と凍結プランの完遂に力を注いでほしい。頼む。 |
森 | では仕事にかかろう。 |
一同 | はい。 |
矢口 | 森課長。 |
森 | はい。 |
矢口 | 凍結プランの進捗はどうなってますか? |
森 | ゴジラのデータ不足の為、シリカやトロンビンなどをベースとした血液凝固促進剤のプロトタイプを民間各社で手分けして、24種類ほど生成中です。このどれかが効くはずなんですが。 |
矢口 | その検証はどうしますか? |
尾頭 | 生体細胞の回収を陸自とうちのレンジャーに頼んでいます。そのサンプルを使って絞り込みます。 |
袖原 | 了解した。サンプル回収作業、完了です。 |
尾頭 | 副本部長。早速、筑波のBSL4対応施設に回します。 |
矢口 | 分かった。残りのサンプルは官民を問わず、P3レベルに対応可能な研究所に送ってくれ。 |
尾頭 | しかし、国の最重要機密指定物です。ヤバいですよ。 |
矢口 | いいんだ。少しでも多角的なゴジラの情報が欲しい。 |
士長 | 空間放射線量は、ほぼ動きがないですね0.8から1シーベルト付近で安定しています。 |
2曹 | 寝相はいいんだな。 |
小隊長 | その分、腹にエネルギーを貯めてるってことだ。 |
小隊長 | 交代だ。戻れ! |
矢口 | はい。矢口です。 |
パタースン | It's me. あと5分立川に着く。総理臨時代理に至急ミーティングよろしく。 |
里見 | では、改めて米国の知見を、日本国危急の事態に提供したいと。 |
パタースン | はい。中露を中心にゴジラを日本政府から国際機関の合同管理下に置こうという動きがあります。同調する国も多い。 (Yes.There is a movementcentered on China and Russia, to take Godzilla from under the control of the Jpanesegovernment, and put it under the control of international organizations.Many countries aligned with that opinion, too.) しかしながら、米国政府としては日米共同によるゴジラの完璧なコントロール権を強く望みます。 (However, as for the US government, we strongly hope that Japan and the US can perfectly control Godzilla together.) |
赤坂 | Okay. 政府の見解としてその為の2プラス2による協議は認めましょう。しかしながら、軍官の専門家を政権中枢意思決定の場に常駐という申し出はお断りします。その代わりに―― (From the government's point of view, it is for that reason that we would agree to 2-plus-2 cooperation. However, as army experts will remain as the backbone of the government, we have to respectfully decline your offer to remain at the center of decision making. In place of that, we will…) |
森 | ゴジラの研究は、日米コアリションってことですか。 |
矢口 | いいじゃないですか。知恵は多い程ありがたい。彼らにスペースを開けましょう。 |
矢口 | Nice meet you. I'm Rando Yaguchi. |
陸自隊員 | 陸自の新無人偵察機システムによる検証映像です。 |
間 | うっ……なん…… |
陸自隊員 | 撃墜後、即座に休止しました。シュミレーションD2と同じ結果です。 |
リヒター | やはりゴジラにはフェイズドアレイレーダーのような器官があると推定される。 (Just as I thought. It appears that Godzilla has something like a built in phased-array rader.) |
袖原 | 今後、接近する飛行物体は本能的にすべて迎撃されると見て間違いありません。 |
本部通信員 | スクワッド2、こちらCV1、ゼロマークより5分経過。行動可能時間残り10分、送れ。 |
陸自隊員 | CV1、スクワッド2、了解。 |
安田 | 各所で起きている事象と筑波からの各種データを合わせて検証した、ゴジラの無生殖による個体増殖の可能性です。 世界中へネズミ算式に個体が群体化すると予測しています。 |
間 | 進化的見地から小型化だけでなく、有翼化し、大陸間を飛翔する可能性すらある。 |
リヒター | Let'ts go. |
米国研究者A | その時は人類は終わりだ。 (And that will mark the end of the human race.) |
米国研究者B | その前に、人類の叡智の炎を使うしか救いの道はない。 (Before that happens, our nuclear wisdom is the only road to salvation for mankind.) |
パタースン | マジですか? (Are you serious?) |
パタースン | ワシントンで国防長官がGodzilla……、いえゴジラの処分に熱核兵器を使用すべき、と主張している。 |
矢口 | ホワイトハウスの動向は? |
パタースン | 西海岸へのゴジラ上陸の可能性が13%というレポートが大統領に上がった。国連大使が安保理に対して対ゴジラ専門の多国籍軍の設置工作を始めたそうよ。 |
矢口 | 米国は、本気か。 |
パタースン | 本気ね。YOKOTAと本国の研究チームが弾道ミサイルによる核攻撃しか術がないとの結論を出した。ペンタゴンでは既にB83核弾頭の爆発規模選定と有効な爆発高度設定のチームが動いているそうよ。 |
矢口 | このまま、東京で使う気か。 |
パタースン | 私に即時退去命令が出た。 |
矢口 | そうか。その可能性が高い、という事だな。 |
パタースン | ええ。 だからこそ今は戻らない。祖母を不幸にした原爆を、この国で3度も落とす行為を私の祖国にさせたくないから。 |
里見 | わかりました。そのように善処いたします。ロス大統領。 |
松沢 | Certainly. We would act accordingly that way, President Ross. |
里見 | 聞いていた通りだ。ホントにあの国は無茶を押し付けてくるんだな。 |
片山 | それにしても、この内容はひどすぎます! |
里見 | だよなあ。長官代理、呼んでくれ。 |
風越 | はい。 |
里見 | 米軍を中心とした対巨大不明生物の多国籍軍結成を、国連安保理が決議した。当事国として我が国も参加。その指揮下で動くことになる。まあ、これを総理に全権委任する特別立法を成立させてくれ。 |
赤坂 | 東京での、核兵器使用の容認もですか。 |
里見 | こんなことで歴史に名を残したくは、なかったなぁ。 |
赤坂 | この先は国連の名の下に米国が巨大不明生物の処置を管轄する。戦後日本は常にかの国の属国だ。 |
矢口 | 戦後は続くよ、どこまでも。だから諦めるんですか。 |
赤坂 | 熱核兵器の直撃、数百万度の熱量に耐えられる生物はいない。確実に駆逐するなら核攻撃は正しい選択だ。 |
矢口 | しかし、凍結手段もメドが立ちつつある状況です。再考を願えませんか。 |
赤坂 | お前のプランにはまだ不確定要素が残ってる。それに巨大不明生物の核攻撃を容認すれば、復興時の全面的支援を世界各国から約束される。 巨大不明生物を確実に処理できなければ、日本は世界の信用を失う。多国籍軍の核攻撃に頼るしかない。 巨大不明生物生物を消した後の、日本の事までを考えるのが私の仕事だ。 |
矢口 | 今なら東京3区の被害で済みます。まだ東京の復興は可能です。核を使えばそれも難しくなります。 |
赤坂 | 既に東京の経済機能はないに等しい。円も国債も株価も暴落し続ける現状では復興どころかデフォルトの危機にさらされている。日本には、国際社会からの同情と融資が必要だ。 |
矢口 | 国の復興が最優先ですか。 |
赤坂 | この国を、救う道は他にない。矢口、夢ではなく現実を見て考えろ。 |
森 | えっ?ゴジラに対して熱核攻撃? |
根岸 | ここで使うんですか! |
矢口 | 先程政府が承認し国連大使に通知した。 |
袖原 | マジかよ…… |
間 | ゴジラは進化自体を超越し、死をも克服している可能性すらありうる。だから核で滅却するか、矢口プランで凍結させるしか事態収束の方法はない。 |
安田 | そりゃ、選択肢としてはアリだろうが、選ぶなよ。 |
尾頭 | ……ゴジラより怖いのは、私たち人間ね。 |
矢口 | 国連はすぐにでも核弾頭を使いたいだろうが、人道的配慮で都民の避難を優先するだろう。その間に凍結プランを確立させるしかない。 |
森 | ですね。ま、サンプル実験で適応可能な生成物は確定できましたが、量産はこれからです。 |
安田 | ゴジラの推定血液量から計算して、凝固剤は最低672キロリットル必要です。 |
町田 | 全国でプラントの確保は進めているんだが…… |
小松原 | 間に合いますか? |
矢口 | 必ず間に合わせるんだ! 諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう。 |
町田 | 全国の民間化学会社に、可能な限りの製造ラインを確保できるよう、審議官から次官にお願いします! |
安田 | そちらの研究員に資料を渡しますから、明日中に生成過程の簡略案を出すように、局長から頼んで下さい。 |
尾頭 | サンプルをバラまいていたお陰で、各種照合が進みます。確かに、知恵は多い方がいいですね。 |
津秋 | 血液凝固剤の現地輸送は、警察と国交省でロジを詰めておいてくれ。 |
竹尾 | それは僕がやるから。圧送業界への音頭取りを経済産業省でやってほしい。 |
庭野 | タンク車を最終的に政府で引き取ってくれるなら、上海の業者が3台提供してくれるそうです。 |
町田 | サイズは問わない。最低でもあと5台ホイールローダーの調達を頼む。 |
片山 | ランシング大使よりゴジラが先の戦闘時に放出したエネルギー量を多国籍軍が推測し、再び同レベルに蓄積するまで、あと360時間との結論が通知されました。 |
泉 | 後15日でゴジラが活動を再開する可能性が、極めて大です。 |
里見 | そうか。 |
アナウンス | “1時間後に本国へのチャーター機が出発する。残っている全職員は退去準備を急げ” (“A character home will be leaving in an hour. All remaining staff, prepare to leave immediately.”) |
カートランド | ゴジラに対する核攻撃開始時間が決定しました。5分後にカウントダウンスタートです。 (The start time for strike against Godzilla has been decided. Countdown will begin in 5 minutes.) |
ペイン | 最早中断はあり得ないか。 (So it's too late to turn back now.) |
ランシング | 住民避難のために残された日本への猶予期間は2週間。多国籍軍にとっては長いが日本には短すぎる。 (Japan has been given a 2-week grace in order to evacuate remaining residents. That may seem long for the Allied Forces, but it's too short for Japan.) |
里見 | 避難とは、住民に生活を根こそぎ捨てさせることだ。簡単に云わないでほしいな。 |
泉 | 全くです。 |
危機管理担当要員 (警察庁) | 360万人の疎開?あまりにも無茶です!その規模では警察もオペレーション遂行は困難です。 |
危機管理担当要員 (消防庁) | 都内だけでなく千葉神奈川も該当地区です。あまりに対象者が多すぎる。 |
危機管理担当要員 (総務省) | 小塚都知事も東京がなくなると、反対しています。 |
赤坂 | 国の重要決定事項だ。自治体レベルの話じゃない。 |
平岡 | しかし、受け入れ先の選定や許可だけでも困難です。2週間ではとても。 |
赤坂 | 巨大不明生物が活動を再開した時点で熱核攻撃の開始時刻は無条件に繰り上がる。その時は犠牲者もやむを得ないとし、速やかに戦略原潜の弾道弾による熱核攻撃を開始するというのが、安保理と多国籍軍の決定だ。 |
危機管理担当要員 (警察庁) | クソっ!遠いアジアの出来事だからって、無茶苦茶云いやがる! |
赤坂 | 例え、ここがニューヨークであっても、彼らは同じ決断をするそうだ。 |
消防隊員 | 子供を優先します!親御さんは絶対に手を離さないでください! |
女性 | 疎開ってどういう意味?初めて聞いた。 |
女児 | お母さーん。 |
男児 | ねえ、どこいくの? |
男児 | パパ、怖いよ。 |
早船 | 西日本の土地は高騰して、食料も不足。関東地方の会社や企業も休業していて街は失業者で溢れかえっている。投資家の思惑から円安も続くし。まあ、それが金儲けになる人もいる。多種多様ですな、人の世は。 |
志村 | ネット以上の情報は? |
早船 | もちろんです。まあ、こっちも仕事ですので。核攻撃の1日前には記事に、という確約と交換ではどうでしょう。 |
志村 | 新たなゴジラネタです。その代わり発表のタイミングはこっちで。どうでしょう。 |
早船 | はいはい。分かってますよ。 |
矢口 | 教授は、唯一の救いであった自分の妻を死に追いやった放射性物質を憎んでいた。だから、放射性物質を無効化する研究を続けていたらしい。 |
尾頭 | 放射性物質を無害化が可能、ということは新たな放射性物質を作り出すことも可能。後に軍事利用されることを危惧したんですね。 |
根岸 | それで意図的にDOEのデータを歯抜けにしたのか。 |
矢口 | 彼は、放射性物質を憎んでいた。そしてそれを生み続けた人間そのものも憎んでいたんだろう。妻を見殺しにした日本という国も。 |
志村 | それでいて、今度はデータをわざと残して好きにしろって、変わった人ですね。 |
矢口 | 彼は最後に、何を好きにしたんだ? |
森 | あぁ。ごちそうさまでした。 |
矢口 | 解析図の謎は解けたか。 |
安田 | 内閣情報局の暗号専門部署にも手伝ってもらってますが、さっぱりです。米国はまだですか。 |
矢口 | そう聞いているが、実のところは不明だ。今は当てにしないほうがいい。 |
尾頭 | ゴジラに関する多層的な展開による重要データということは分かるんですが、その先がまだ。 |
間 | 科学的な図式というより観念的な文様だ。むしろ曼荼羅に近い。先に答えを想像しないと解けないという逆説的な問いかけになっている。牧元教授はかなりの偏屈者だよ。この簡単な線の意味さえ分からん。 |
安田 | なんでそもそも、データじゃなくて紙なんだ。 |
志村 | なんか、折れ線みたいっすよね。しかし、これだけの図体。昔の放射性廃棄物だけじゃ、腹持ちしなさそうですよね。 |
森 | そうだな。噛み合わせの悪そうな歯並びだ。これじゃ核物質も捕食できんぞ。 |
間 | 折り紙。食べてないんだ。 |
尾頭 | 2種の折り紙の形状から新たな図式情報が追加され、解析パターンをすべて網羅することができました。その結果―― |
間 | 放射性物質がエネルギー源という情報にこだわりすぎた。元教授が残した解析図は、恐らく、元素を変換する生体機能部の分子構造図です。元素変換細胞膜とでもいうのかな。先に検出された未知の放射性同位体元気のエネルギーが、その証左です。 |
尾頭 | 水素や窒素等、陽子数が少ない物質を取り入れて、細胞膜を通し細胞内の元素を必要な分子に変換してしまう。その崩壊熱を利用した、熱核エネルギー生体器官を内蔵する混合栄養生物と推測できる。大胆な仮説ですが、行けそうです。 |
志村 | 水や空気があればどこでも生きていけるって、霞を食っている仙人みたいだ。 |
矢口 | つまりゴジラは、人類の存在を脅かす脅威であり、人類に無限の物理的な可能性を示唆する福音でもある。ということか。 |
森 | しかし、そんな細胞膜を持っていたら、血液凝固促進剤も体内で無力化される可能性が高い。矢口プランが成り立たんぞ。 |
竹尾 | 有り得る話だ。で、どうする? |
尾頭 | 他に代案はありません。矢口プランの確度を上げるだけです。 |
森 | まずはこの分子構造を解析して、回避手段を考えるしかないな。解析の準備は? |
安田 | ウチの主導で、日本中のスパコンを並列化して解析する予定でいますが、それでも結果が出るまで何日かかるか。 |
志村 | 核が落とされるまで、あと10日しかないのに。 |
安田 | なので、コネの多い局長代理から世界中に声かけてもらっています。 |
アナウンス | 陽電子ビーム収束装置による第2回タウ波発生実験は、予定通り午後1時から行われます。 (Experiment Nummer Zwei zur Tauwellenerzeugung wird planmäßig um 13Uhr im Beta-Plus-Strahlenbeschleuniger stattfinden.) |
事務職 | 日本からです。 (Die Kollegen aus Japan.) ここのスパコンを並列につないでゴジラの解析に協力して欲しいそうです。 (Sie bitten darum, unseren Supercomputer mit ihren parallel zuschließen, um Godzilla analysieren zu können. ) |
研究者 | 止めましょう。クローズのシステムを他国に解放するとここの研究データを盗まれます。 (Unter keinen Umständen. Wenn wir unseregeschlossenen Systeme für fremde Landeröffnen,können wir unsere Forschungsdatenauch gleich im Internet veröffentlichen.) |
研究所所長 | いえ、ここは人間を信じましょう。喜んで参加すると伝えて。 (Langsam, langsam. Lassen Sie uns den Japanern vertrauen. Sagen Sie ihnen, dass wir sie gerne unterstützen.) |
安田 | 牧元教授の解析が解けました! |
森 | おい、急げよ。 |
安田 | ほら。 |
間 | こりゃ驚いた。 |
安田 | 正体は細胞膜自体ではなく、細胞膜の活動を抑制する極限環境微生物の分子構造だったんです。 |
尾頭 | この抑制剤を同時に投与すれば、血液凝固剤の性質を維持できる。ゴジラ凍結に希望がもてます。 |
森 | いけますよ、これ! |
矢口 | よし。 |
矢口 | 牧元教授はこ事態を予測していた気がする。彼は荒ぶる神の力を解放させて、試したかったのかもしれない。人間を、この国を、日本人を、核兵器の使用を含めて、どうするのか好きにしてみろと。 |
パタースン | そうね、あなたに好きにしてみろと…… けど、この国で好きを通すのは難しい。 |
矢口 | ああ。僕一人じゃな。 |
泉 | 総理。巨災対の働きで矢口プランの問題点は解決に向かっております実行の承認を、重ねてお願いします。 |
里見 | しかしなぁ、泉ちゃん。もう国連決議まで出ちゃってるしな。 |
泉 | 米国はゴジラ存在を隠匿していた事実をうやむやにする為に、早期の幕引きを図っている節もあります |
里見 | そんなことは、分かってるよ。泉ちゃんだって我が国の立場、分かってるだろ。 |
泉 | ですが、総理。自国の利益のために他国に犠牲を強いるのは、覇道です。 |
里見 | 我が国では人徳による王道を行くべき、という事か。 |
赤坂 | 総理。そろそろ好きにされたらいかがでしょう。 |
里見 | そうだな。で、どれにハンを押せばいいんだ? |
矢口 | “巨大不明生物の活動凍結を目的とする血液凝固剤経口投与を主軸とした作戦要項”。長いですね。 |
財前 | 役所のすることですから。 |
矢口 | “ゴジラ凍結作戦”も子供っぽいですから、“ヤシオリ作戦”としましょう。 |
財前 | 分かりました。作戦の運用は5段階、朝霞で詳細に詰めてあります。 |
石倉 | 仮設架線と軌条の復旧作業、隊員による車両の遠隔操作の訓練と爆薬の設置作業も終了しています。 |
山岡 | 後は、実行のみです。 |
矢口 | ありがとうございます。 |
財前 | 礼はいりません。仕事ですから。 |
志村 | カウントダウンも残り2日か。 |
森 | くっそ、抑制剤の最低量の製造確保にどうしてもあと3日かかります。なんとか24時間カウントを中断できませんか。 |
小松原 | 安保理に対し、引き延ばし工作を考えるしかないな。どこを動かす? |
尾頭 | 中露は地政学的に近すぎますから、反対どころか推進しています。 |
町田 | フランスはどうだ。原子力推進国だ。ゴジラの体内システムには興味津々だと思う。 |
森 | うん。 |
泉 | フランス政府にパイプがある。裏で交渉してみるよ。 |
森 | お願いします。 |
庭野 | 私も欧州局長に連絡を入れておきます。 |
矢口 | 頼む。片山外務大臣には俺から話しておく。なんとしても24時間確保してくれ。 |
一同 | はい。 |
カスリー | フランスがカウントダウンの中断を申し入れてきた。中露は反対しているが我が国は沈黙だ。 (France has petitioned to interrupt ther countdown. China and Russia are opposed, but we're maintaining silence.) |
パタースン | ワシントンもペンタゴンも核の強硬論だけではありませんから。 (That's because it isn't just hardliners at the nucleus of Washington and the Pentagon.) |
カスリー | まさかこの国が狡猾な外交手段を使えるとは驚きだ。危機というものは日本ですら成長させる様だな。 (Japan has grown up enough to have international trade deals on the sly. Danger is another opportunity for personal growth.) |
パタースン | 友人が今、有効性の高い凍結計画を進めています。 この国はそれに賭けたのでしょう。 (Our friends are progressing with an effective deep freeze plan. I think this country is betting on it.) |
カスリー | その賭けに君もレイズか。核兵器は抑止力だ。使用回避をロス大統領に進言しよう。だが主流派の意向に逆らう動きだ。君も私も報復のリスクを背負う。私はいいが君の完全潔癖な経歴とパタースン家に汚点が残る。40代で大統領の夢が消えるぞ。 (And you're raising that bet also I see Nuclear weapons are a deterrent. I've been trying to advise Charles against it. But it goes against the flow of the mainstream. And you and I must bear the risk of retaliation.Me, I'm OK. But you. with your fastidious career and the Patterson name, mud will stick. And your dream of becoming President in your 40s will disappear.) Hey, Kayoko. 幸運を (Good luck.) |
パタースン | Yeah. |
矢口 | 米軍との共同作戦? |
パタースン | 自衛隊だけで行動するより、作戦成功率が上がる。 |
矢口 | 互いの指揮は独立しているが、歩調を合わせられるか。 |
パタースン | この国は好かれてるわね、空軍も海兵隊からもサポート志願者が続出よ。無人攻撃機も調達済。どう、一口乗らない? |
矢口 | 乗ろう。ただし無傷で返す保証はなしだ。 (But there is no guarantee of them coming back in one piece.) |
パタースン | 大丈夫。損耗分の請求は後で日本政府に回すから。 (Of course. I'll bill Japanese government later.) |
森 | 何とか必要最低限の抑制剤を確保した。そうだ。至急、つくばのSBにタンク車を回してくれ。頼む。 |
町田 | こちらも集積可能な資材と、搬送可能な血液凝固剤で作戦を断行します。本部にGOサインを送ってください。 |
志村 | 副本部長。今一度、前線部隊への同行は考え直していただけませんか。 |
矢口 | 作戦には政治的な判断が必要な状況が予想される。即座にそれが出来る者が必要だ。 |
泉 | とはいえ、危険すぎる。為政者は後方指揮でいいだろ。10年後には総理じゃなかったのか。 |
矢口 | 僕が10年後に総理になるより、10年先にもこの国を残す方が重要だ。この国にはは有能な若い人材が官民に残っている。君もいるし、次のリーダーは問題ないよ。 君のキャラには、助けられた。礼を云う。 |
泉 | かいかぶりだ。赤坂先生の手腕だよ。 |
矢口 | 後は頼む。 |
泉 | おう、幹事長なら任せとけ。 |
矢口 | 今回のヤシオリ作戦遂行に際し、放射線流の直撃や急性被曝の危険性があります。 ここにいる者の生命の保証は出来ません。 だが、どうか実行してほしい! 我が国の最大の力はこの現場にあり、自衛隊はこの国を守る力が与えられている、最後の砦です。 日本の未来を、君たちに託します。以上です。 |
特殊建機中隊長 | では、分かれ! |
一同 | はい! |
施設科要員 | 施設科定置爆破中隊より最終運用試験完了の連絡あり。運用に問題なし。試験小隊、撤収完了。 |
航空科要員 | レーザー誘導ユニット、各照射ポイントに設置完了。高級部隊とのコード互換テスト、終了済です。 |
本部管理中隊 第2科長 | 現在、北西の風2メートル、ゴジラプルームが東京湾に向かい被害が最小限レベルと推測される状況です。 |
第4科要員 | 空間放射線量は、依然0.8〜1シーベルト付近で安定中。作戦運用に支障ありません。 |
通信小隊長 | 全部隊、配置完了。準備よし。 |
野城 | 米軍本部から連絡。各無人攻撃機部隊、予定位置に滞空中。問題なし。 |
丹波 | 対策副本部長、こちらはいつでも行けます。 |
甲斐 | しかし、都庁から避難完了の報告がまだです。 |
矢口 | いえ。この機は逃せません。決行します。自治体に屋内待機を徹底して下さい。丹波1佐、お願いします。 |
丹波 | 分かりました。関東地区の各自治体に連絡。以降、50時間の一切の外出自粛と全住民の屋内待機を要請。 |
通信小隊長 | 了解。新橋より連絡。無人車両全車切り離し完了。ゼロポイントを通過。 |
丹波 | では、ヤシオリ作戦を開始する。 第1段階、陽動始め! |
通信小隊長 | 陽動成功!無人新幹線爆弾、効果あり。 |
丹波 | 作戦、第2段階。航空部隊、攻撃開始! |
野城 | 了解。米軍へ連絡。 |
米軍 リエゾン | こちらブラボー1。第一波攻撃開始。 (Command, this is Bravo 1. Target insight, engaging.) |
米軍本部 | “了解。第一波攻撃開始する” (“Copy that. First wave airborne, engaging”) |
通信小隊長 | 目標、予定通り背部より放射線流を放出中。 |
袖原 | 作戦通りです。飛行する物は全て全て撃ち落としています。 |
通信小隊長 | 第1波、全滅! |
丹波 | 構わん。消耗戦だ。ゴジラが熱焔を放出不可となるまで、吐かせ続けろ! |
無線A | 無人攻撃機、第2波全滅。第3波、攻撃を開始。 |
無線B | 目標、キルポイント1へ移動中。 |
通信小隊長 | 第3波、全滅! |
根岸 | 新たな汚染区域が拡大しています。 |
丹波 | 副本部長。積線量が予定値を超えます。 |
矢口 | 今止めたら、全てが無駄になります。このまま攻撃を続行してください。 |
通信小隊長 | 第4波、壊滅! |
丹波 | 第5波、攻撃を開始。 |
野城 | 目標、背部放射線流の放出を停止。第5波、攻撃を続行中。 |
陸自隊員 | まさか、あんなことが…… |
通信小隊長 | 攻撃機第5波、全滅。 |
甲斐 | ゴジラプルーム、予想値の2倍を超えます! |
丹波 | ひるむな。耐えるしかない。第6波、攻撃を開始! |
根岸 | 放射線流の絶対量が低下しています。 |
通信小隊長 | 目標の熱焔放射停止を確認。 |
野城 | 目標、キルポイント1に誘導完了。 |
丹波 | よし。作戦、第3段階。定置爆破開始。 |
作業小隊長 | 点火! |
根岸 | 放射線流の絶対量、予定値まで落ちました。 |
通信員 | 目標、キルポイント1に固定中。 |
丹波 | 了解。作戦、第4段階。誘導爆破開始。 |
通信小隊長 | 目標、転倒! |
通信員 | キルポイント1に固定完了。 |
丹波 | 作戦、最終段階。特殊建機小隊、行動開始。 |
村山 | 了解、第1小隊、前へ! |
第1小隊通信員 | 特建 |
隊員A | アメノハバキリ01、特建 |
第1小隊長 | 特建11、アメノハバキリ01、了解。防御円陣にて待機警戒せよ。特建各車、アウトリガー
展開、BP1に侵入。 |
隊員A | 特建12、BP2にて展開完了。 |
隊員B | アメノハバキリ01、特建 |
第1小隊通信員 | 特建15、アメノハバキリ01、了解。作業可能レンジに留意せよ。 |
第1小隊長 | 各機、注入を開始! |
隊員 | 凝固剤、注入開始! |
隊員 | 全車、ポンプ作動!リモコン操作、問題なし! |
第1小隊長 | よし!回転上げろ!出力最大!出来るだけ奴の中に流し込め! |
安田 | 投与量、予定の20%を突破。 投与量、予定の30%を突破。 |
通信小隊長 | 特殊建機第1小隊、全滅。 |
野城 | 投与の効果あり。目標、動きが鈍っていきます。 |
丹波 | この機を逃すな。無人在来線爆弾、全車投入! |
通信小隊長 | ゴジラ、再度転倒! |
矢口 | 丹波1佐、第2陣の出発をお願いします。 |
丹波 | 第2及び第3小隊、前へ。一気に凍結させろ! |
菊池 | 全車、一斉に投与を開始! |
隊員 | 投与量、50%を突破。 |
隊員 | タンク車、20番までが空になります。 |
菊池 | 了解。21番からの交代作業、急げ! |
安田 | 投与量、75%を突破。血液凝固剤、投与すべき最低量を超えました。 投与量、90%を突破。 投与量100%、臨界点を超えました。 |
野城 | 目標、表皮に凍結が認められます! |
安田 | 頼む。計算通りにいってくれ。 |
矢口 | やったか? |
第3小隊通信員 | 目標、再度活動を開始! |
第2小隊通信員 | 特建 |
第3小隊長 | 総員退避!総員退避!各車陣地変換、急げ! |
第3小隊通信員 | 特建03、各車、損耗最大!作業続行不能! |
第3小隊通信員 | 02、03各車、装備を放棄し速やかにホールディングエリアまで退避 |
根岸 | 胸部中心部の温度、マイナス196度に低下。 |
野城 | ゴジラ、完全に沈黙しました。 |
丹波 | 現時刻をもってヤシオリ作戦を終了する。 |
矢口 | ありがとう。ご苦労でした。 |
赤坂 | 発射まで1時間を切っていた。微妙なタイミングだが、フランス説得し続けた総理臨時代理のおかげだ。 |